38.越中国 富山県高岡市伏木古国府 JR氷見線伏木駅 02.07.12


越中国は万葉の国である。天平18年(746)若干29歳の大伴家持が
越中国守として、赴任する。5年後に都に戻るまで、この国の自然をこ
よなく愛し、詩情あふれる名歌を残した。万葉集に載る家持の歌は、
479首を数えるが、そのうちの223首が、越中国守であった時期の歌
である。市内には家持を始め、万葉歌人の歌碑がいたるところにある。

高岡駅前の大伴家持像


越中国府跡(勝興寺境内)


越中の国府は、高岡市伏木にあった。JR氷見線の伏木駅からまっすぐ
に続く坂を登り切ったところが、勝興寺である。浄土真宗の名刹だが、今
は平成の大修理とかで、大きな覆いがかけられている。関係者以外立ち
入り禁止だが、特に頼んで中に入れてもらった。

本堂の裏側に国府跡の碑が、草に埋もれるように立っていた。
碑の裏には、家持の歌が刻んである。

あしびきの 山の木ぬれの ほよ採りて
        かざしつらくは 千年寿ぐとぞ


「ほよ」というのはやどり木のことで、髪にかざすとめでたいという。

越中國庁跡の石碑 草に埋もれていた


勝興寺(重要文化財)

勝興寺は戦国時代の一向一揆の拠点となった城郭寺院で、
浄土真宗西派の寺だ。本堂は改修工事中で、大きな覆いが
かけられている。平成11年に始めて、完成は平成17年とい
うから、6年にわたる大規模な改修工事である。

勝興寺は蓮如上人の土山御坊を始めとする古刹で、承久の乱で
佐渡に流された、順徳上皇の勅願所である殊勝誓願興行教寺の
門徒が、その土山御坊を頼り、のちに勝興寺と称することになる。

一時は、時の城主に反抗して、この地一体を支配したが、天正12年
(1584)に富山城主佐々成政により、ここ、古国府の地を与えられた。


国の重要文化財「経堂」 本堂の覆い屋根は遠くからでも目を引く大きさ


国司館跡

大伴家持が住んだであろう国司館の跡が、気象観測所の敷地から
発掘されている。付近は古国府とか、古府(ふるこ)といった地名が
残り、それが何よりも雄弁に歴史を今に伝えている。

この高台にも東館(ひがしだて)という小字名が残っている。
真下に射水川(現在の小矢部川)が流れ、眼前には雪の立山連峰を
望む景勝の地であった。

朝床に 聞けば遙けし 射水川
     朝漕ぎしつつ 唱ふ船人


家持の愛した、のどかな風景である。

伏木観測所 なんだか無人の建物のようだ 国司館跡の説明版


文字通り古代の国府を思わせる 古府と書いてフルコと読むのだそうな


越中国分寺跡


越中国分寺は勝興寺から北西へ20分ほど歩くと、伏木中学校の裏手にあった。
今は、小さな薬師堂がひっそりと建っている。

なぜか、薬師堂を取り巻くように、小さな石仏が並んでいる。

越中国分寺薬師堂 今にも朽ちかけそう 周りを囲む石仏 何を意味するのだろう


薬師堂の建っているあたりから、金堂か講堂のような建物の土壇が発掘されている。
また、約20メートル南東の民有の墓地には塔跡と思われる基壇があるという。

何だかわからないが古い天部像 塔跡と思われる基壇があった民有の墓地



気多神社(越中一之宮)


国分寺からさらに東へ20分ほど歩くと、越中一之宮の気多神社だ。
大鳥居の前に、コンコンと湧き出る清水があり、境内は鬱蒼とした杉林で
すがすがしい雰囲気である。

社伝によれば、天平宝字元年(757)、能登国が越中国から分立した後、
越の大社と崇められていた能登羽咋の気多大社を、この地に勧請したも
のと云われている。

木曽義仲、上杉謙信による戦火で灰燼に帰したが、永禄年間(1558〜70)
に再建された。現在の本殿は、三間社流れ造り、こけら葺き屋根の室町時代
の建築で、国の重要文化財である。

馬並めて いざ うち行かな 渋谷(しぶたに)の
       清き磯廻(いそみ)に 寄する波見に

気多神社拝殿 本殿 三間社流れ造り こけら葺き屋根



万葉の世界

寺井

勝興寺から国分寺に行く途中に、寺井と呼ばれた井戸の跡があった。

大伴家持が越中時代に詠んだ歌の中でも、もっとも有名な歌。

もののふの 八十乙女らが 汲みまがふ
         寺井の上の 堅香子(かたかご)の花


の歌碑が立っている。堅香子はカタクリの古名。この井戸の周りに、たくさんの
カタクリの花が咲いていたのだろうか。

寺井 つい最近まで清水が湧いていたという 家持の堅香子の歌碑


万葉歴史館

気多神社から15分ほど南に歩くと、高岡市ご自慢の万葉歴史館に出る。
大伴家持の越中国守だった頃を中心に、万葉集の資料が集められている。

家持の一生を、立体的な電気仕掛けの人形と、映像とで紹介する「家持劇場」や、
万葉集に登場する植物を集めた「万葉の庭」などが見ものである。

万葉集の古写本なども展示されていて、万葉愛好家にはたまらない魅力だろう。

万葉集から私の好きな家持の歌を、いくつか挙げる。

春の苑 紅にほふ 桃の花 
     下照る道に 出で立つ娘子(おとめ)

うぐひすの 鳴き散らすらむ 春の花
        いつしか君と 手折りかざさむ

玉くしげ 二上山に 鳴く鳥の
      声の恋しき 時は来にけり

ふりさけて 若月見れば ひと目見し
       人の眉引(まよびき) 思ほゆるかも

正面エントランス 展示館


越中国地図



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